皮膚の構造と美容鍼の3つの効果
ここでは、美容の悩みが発生するメカニズムをお伝えして、美容鍼がの3つの効果を詳しく解説します。
皮膚の構造
皮膚は、真皮と表皮からできており、表皮の下が真皮になります。表皮には血管や神経がなく、細胞が配列。対して、真皮には、血管や神経があります。
皮膚の構造:表皮
表皮の構造は、上から、角質層、顆粒層、有棘層、基底層になっています。基底層でできた細胞は、だんだんと扁平になりながら、顆粒層に到達するのです。
基底層の細胞が顆粒層に到達するまでの期間が、一般的に約4週間と言われています。角質層になると、さらに薄い細胞が並んでおり、それらは死んだ細胞になります。
そして、角質層から皮膚がはがれるまでの期間が、約2週間です。つまり表皮の細胞が生まれてから、皮膚から剥がれ落ちるまでに6週間かかるのです。(※諸説あり)
以上の一連の流れは、肌のターンオーバーと言われます。
皮膚の構造:真皮
引用元:医学的に正しい美容鍼
表皮の下にある真皮は、表面からは見えませんが、しわやたるみに関係があります。真皮層にはコラーゲンという膠原繊維やエラスチンという弾性繊維、ヒアルロン酸があり、それぞれが表皮を支えて弾力を保つ役割を担っています。
では、以上の肌の構造に対して、美容鍼はどのように作用して、どのような効果が期待できるのでしょうか?以降では、美容鍼の効果の概要を述べます。
顔の美容上の悩みに対する美容鍼の効果
ここでは、「しわ、たるみ、むくみ」に対する美容鍼の効果を考察します。
しわやたるみへの美容鍼の効果
美容鍼をすると、しわやたるみの改善が期待できます。
なぜなら、美容鍼で皮膚に小さな傷を入れると、膠原繊維や弾力繊維を増やして、傷口を治そうとする力が働くからです。
老化とともに増えるしわは、膠原繊維や弾力繊維の減少が原因のひとつです。
《膠原繊維と弾力繊維とは》
・【膠原繊維】主にコラーゲンからできており皮膚の耐久性を与える。
・【弾力繊維】エラスチンからできていて皮膚の弾力性を保つ。
老化しわは繊維内のコラーゲンやエラスチンが減少して弾力性がなくなった状態。弾力がない肌は、同時に皮膚を引き上げる力もなくし、たるみにもつながります。
鍼で小さな傷を作り、弾力繊維や膠原繊維が増えると、しわが薄くなったり、たるみがすっきりする可能性があります。
つまり、美容鍼で小さな傷を入れて自然治癒を促進することで、しわやたるみを改善が期待できるのです。
詳しいメカニズムは、後述します。
次に、美容鍼のむくみに対する効果をお伝えします。顔のむくみがすっきりすると、顔が小さく見えたり、目のぱっちり感が強調されます。顔のむくみが、美容に与える影響は大きいのです。
美容鍼のむくみに対する効果
美容鍼をすると顔の表皮の下にある血管が開いて、血行が良くなり、むくみ感がすっきりすることがあります。ここでは、美容鍼で顔のむくみの解消が期待できる理由をお伝えします。まずは顔がむくんでしまう理由を、考察していきましょう。
顔の真皮層や筋層にある血液の流れが悪くなることが、むくみの原因の一つになると考えられます。
血流の流れが悪くなると、動脈(上図:赤い血管)と静脈(上図:青い血管)の内の静脈側で血流がせき止められます。静脈がせき止められると、動脈と静脈をつないでいる毛細血管内の血液量が増加。
さらに、水分をはじめとした血液の成分が血管外に染み出ることで、むくみにつながります。ちょうど、川の流れをせき止めたら、その水が川の外へあふれ出るイメージです。
以上が一般的に言われている、血行不良によるむくみになります。
つまり、血行不良が解消されると、顔のむくみが解消されることがわかります。では、鍼を肌に刺すと、なぜ血行不良の解消が期待できるのでしょうか。
鍼の刺激に対する反射で血行が解消される
反射というのは、特定の刺激に対して意識することなく反応することです。わかりやすく言うと、体になにか起こると考えなくても勝手に体が動くことを言います。
たとえば、前から顔に向かってボールが飛んで来たら、思わず目を閉じてしまう反応が反射です。熱いやかんに誤って手を触れた際に、思わず手を引っ込めるのも反射です。
鍼を肌に刺した場合も、鍼の刺激に対する反射は起こります。この時に起こる反射は、軸索反射という血管が勝手に開く反応や、体性ー自律神経反射という自律神経を通した諸々の体の反応です。
鍼の作用で血管を拡張することができれば、むくみの解消への効果が期待できます。
普段から顔にむくみがある方は、むくみを解消することで、目がぱっちりしたり、顔が小さく見えるなどの他のの美容上の効果も期待できますよ。
ここまでで、美容鍼の効果の概要を述べました。以降では、その概要をさらに詳細にお伝えします。
美容鍼の効果の詳細
ここまで解説した通り、美容鍼で期待できる効果には次の3つが考えられます。
創傷治癒、軸索反射、体性-自律神経反射、ターンオーバーの促進です。
ここでは、もう少し話を展開して、以下の点について解説します。
- 創傷治癒による、しわやたるみへの効果
- 軸索反射による血行促進で、くすみ、むくみへの効果
- 体性-自律神経反射による、むくみ、表情への効果
- 血行促進による、ターンオーバーの促進
創傷治癒とは、傷を治そうとする体の反応。軸索反射は、鍼の刺激に対する体で勝手の起こる反応です。
体性-自律神経反射は、体の刺激に対する自律神経を通した体の反応であり、ターンオーバーとは表皮の細胞が生まれて、肌からはがれるまでの過程です。
創傷治癒
鍼を皮膚に刺すと、マイクロトラウマという小さな傷ができます。美容鍼は肌にマイクロトラウマを作ることで、美容を発揮することができます。
なぜなら、傷ができると、そこには体が傷を治そうとする力である創傷治癒が働くからです。創傷治癒とは傷が治ることで、次の3つの段階に分かれて進行します。
第一期:炎症期
炎症が起こると患部が赤くはれて熱がでて、、痛みを伴います。
捻挫をイメージしてもらうとわかりますが、捻挫をしてしばらく患部が腫れるのは炎症が起きている状態です。
美容鍼では、髪の毛ほどの太さの細い鍼で、小さな傷(マイクロトラウマ)をたくさん作ります。
マイクロトラウマは捻挫や切り傷のような体への大きな損傷ではありません。そのため、目視できるような痛みを伴う炎症は比較的に起きにくいです。
ただし、まったく炎症や痛みが起きないわけではありません。美容鍼の後に一時的に顔が赤くなったり、口を開けると顎にこわばり感や鈍痛を感じたりすることはあるでしょう。
マイクロトラウマは微細な傷ではありますが、そこには確実に創傷治癒が働きます。
第二期:増殖期
美容鍼による創傷治癒の効果を発揮する際に、増殖期に活性化する線維芽細胞がとても重要な役割を果たします。
受傷後2~3日後に、増えはじめる線維芽細胞の役割は、コラーゲンやエラスチンを作ることです。コラーゲンやエラスチンは、真皮層に存在していて表皮のはりや弾力を保ちます。
増殖期のピークは受傷後(美容鍼であれば、鍼施術後)、1~3週間でピークを迎えます。
第三期:安定期
線維芽細胞のが増えなくなり、コラーゲンの生成も低下します。
弱い毛細血管は破壊されて、取り除かれて数が減少し、規則的に配列。通常の真皮に近い状態となり、治癒が完了した状態に近づくのです。最終的に、皮膚が正常の強さになるまでに2~3週間かかります。
美容鍼における軸索反射
鍼を皮膚に刺すと、血管が自動的に太くなる働きが軸索反射です。
鍼を皮膚に刺すと、知覚神経により脳に伝わることで、鍼の刺激を感じます。そして、知覚神経とは別に神経の軸索という部分を伝わって、脳にはいかずに血管に刺激が伝わります。
この刺激は、考えなくとも無意識のうちに起こる反応です。鍼の刺激が軸索反射により、血管に伝わると、血管が拡張します。その時に、鍼で刺激した部分が赤くなるフレア現象が見られます。(下の写真参照)
血管が太く広がることで、血行が促進されてむくみの解消が期待できます。
美容鍼による自律神経調整
手足や頭部に鍼で刺激を与えると、自律神経を介して体の機能を調整することができます。(※厳密にいうと手足や頭部以外に鍼を打っても、諸々の体の反応がおこりますが、ここでは話を簡略にするために手足や頭部としています。)
自律神経とは、交感神経と副交感神経から成り、内臓、血管、体温などの体の機能を無意識化で制御している神経です。つまり、自律神経のおかげで、考えなくても勝手に内臓や血管を動かしたり、体温を一定に保ったりすることができるのです。
そして、以上のような体の刺激によって起こる自律神経による反応を、体性-自律神経反射と言います。
鍼灸で、内臓、循環器系をはじめとした内科的な疾患を治療できるといわれているのは、この体性ー自律神経反射のためだと現代科学では考えられています。
対して、東洋医学の世界では、鍼の効果のメカニズムを、自律神経ではなくではなく気や経絡で説明しています。手足や頭部をはじめとした体に存在するツボ(経穴)は、経絡という気の通り道によって内臓につながっているというわけです。
自律神経調整がもたらす顔の美容面のメリットには、筋肉の緊張によるこわばりや血行不良の改善、表情に関係する情動的な部分が改善されることにあると考えられます。
表情に関係する情動的な部分が改善するとはつまり、鍼施術によって自律神経が整うと、リラックスできて表情に好影響があるということです。
つまり、鍼灸でリラックスすることで、表情が明るくなる、朗らかになることが期待できるでしょう。
また、内臓機能、血圧などにも好影響を与えて、美容面に好循環をもたらす可能性があります。
美容鍼で、ターンオーバーを促進
肌のターンオーバーとは、肌の細胞が生まれて、肌から剥がれ落ちるまでの過程です。肌の代謝とも言われています。
ターンオーバーは年齢とともに、遅くなります。ターンオーバーが遅くなると、肌の保湿力が低下して、肌ががさついたり、こわばったりします。
基底層の細胞が分裂を始めてから、その細胞が角質層に到達して剥がれ落ちるまで6週間かかります。(基底層の細胞ができてから、角質となりはがれるまでの4週間をターンオーバーという場合もあります。)
表皮の基底層の細胞は、真皮層の血液から養分を受けて作られると考えられます。つまり、美容鍼で顔の真皮層の血行が促進されることで、表皮に養分がいきわたりターンオーバーの促進が期待できるのです。
美容鍼を効果的にするための通院方法
美容鍼を受ける間隔は、創傷治癒の増殖期のピークを目安に考えるといいでしょう。
つまり、線維芽細胞の増殖期が1~3週間であることから1週間の通院間隔がベストですが、3週間程度の間隔でも効果が期待できます。
また、増殖期は肌に傷ができてから2~3日後から始まることから、創傷治癒によるしわやたるみへの効果が期待できるのは、鍼施術直後よりも施術の2~3日後だと考えられます。
そして、ターンオーバーが年齢とともに遅れることを考えると、月に1回など定期的に美容鍼を受けるのも、ターンオーバーを促すことになり、アンチエイジングが期待できます。
美容鍼と並行して行うと良いおすすめの健康習慣
美容鍼を受ける際に、同時に取り入れていただくことで、相乗効果が期待できる健康習慣をご紹介します。
美容鍼×血行を促進する健康生活
美容鍼で期待できる効果には、ターンオーバー促進のアンチエイジングやむくみの改善による小顔効果があります。
これまで解説したように、ターンオーバーやむくみの改善に重要なのは血行の促進でした。そこで、日常的にも血行を促進するような習慣を取り入れることで、美容鍼との相乗効果が期待できます。
血行促進習慣には、たとえば次のような習慣があります。
お風呂につかる
お風呂につかることで、血管が広がって太くなり、血行が促進されます。
鍼の血行促進作用との相乗効果をねらって、普段はお風呂に入らない方も、美容鍼の日はゆっくりと湯船につかってみてはいかがでしょうか?
その他、優しく顔をマッサージするのも有効です。実は、刺さない美容鍼もありまして、自分でも実践できて便利です。
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運動
運動をすることで血行を促進することができます。日ごろ、運動不足を感じている人は、美容鍼をきっかけに運動習慣を取り入れるのもおすすめです。
運動は、ストレッチ、筋トレ、有酸素運動をバランスよく行うのがいいですよ。ストレッチの際は、特に、肩や首周りのストレッチを行うことで頭部への血行を促進できます。
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禁煙
喫煙をすると抹消の血管が収縮することが分かっています。血管が収縮するので、美容鍼の血管を広げる作用とは逆の作用をもたらすことになります。
美容鍼をきっかけに、おもいきって禁煙してみるのもおすすめです。
美容鍼×自律神経を整える健康習慣
美容鍼では、頭部、顔面部、手足のつぼへの刺激で自律神経を整える働きがあります。そこで、日常的にも、自律神経が乱れない生活習慣を心がけることで美容鍼との相乗効果が期待できます。
睡眠時間を一定にする
自律神経は、不規則が苦手な神経です。そのため、就寝時間や睡眠時間が乱れてしまうと自律神経も乱れやすくなります。
できる限り就寝時間や睡眠時間を一定にそろえることで、自律神経が安定して美容にも好影響を与えます。
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マインドフルネス瞑想
マインドフルネス瞑想とは、科学的エビデンスも獲得したストレス解消法です。アメリカを中心に、うつの治療にも取り入れられていると言われています。
マインドフルネス瞑想は、自分の心を観察して今に意識を集中することで感情をコントロールする技術だととらえることもできるのです。
自律神経は感情の影響を受けます。たとえば、不安になったら心臓がばくばくしますが、これは感情に反応した自律神経が心臓に働きかけで鼓動が早くなっている状態です。
マインドフルネスで心の平安を保ち、感情をコントロールできれば自律神経が乱れにくくなります。
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参考文献