なぜ鍼灸で自律神経が整うのか?自律神経失調症に効果的な理由

「本当に鍼灸で自律神経の乱れが整うの?」

「なぜ、自律神経失調症に鍼灸が効果的なの?」

以上のように、自律神経に対する鍼灸の効果について半信半疑の人は、ぜひこの記事をご覧ください。

鍼灸が自律神経を整えられることは科学的に証明されています。

この記事では鍼灸論文や専門書籍をもとに、鍼灸で自律神経が整うメカニズムを解説します。

さらに自律神経失調症を改善に導く鍼灸施術の具体例を写真付き紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

このページを書いた人

東 大輔(ひがし だいすけ)

熊本県熊本市出身・在住の柔道整復師、鍼灸師。

ひがし鍼灸整体院の代表を務める。

臨床歴約10年で鍼灸と整体施術により、健康に悩む人の回復をサポート。

詳しい自己紹介はこちら

目次

自律神経とは

自律神経は体の機能を調整する役割があります。さらに感情の影響を受ける点もポイントです。

交感神経や副交感神経も含めて、自律神経について分かりやすく解説します。

ひがし

鍼灸で自律神経が整う理由を知るためには、まずは自律神経そのものについて知っておくといいですよ。
動画でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

無意識に身体の機能を調整している

自律神経は体の機能を無意識のうちに調整しています。

たとえば、外の気温が変化しても体温が一定なのは、人が意識せずとも自律神経が体温を調整しているからです。

また運動したら心臓が激しく鼓動をうち全身に血液を送れるのも自律神経の働きによるものです。

他にも、血圧や血糖値、汗などありとあらゆる体の機能を調整しています。

感情の影響を受ける

自律神経は感情の影響を受ける特徴があります。

そのため人間関係で不安を抱えたり、仕事でイライラしたりすることが続くと自律神経が乱れてさまざまな不調に悩まされることがあります。

ひがし

精神的ストレスで自律神経が乱れるのは、感情が大きく影響しているからと考えられます。

自律神経は2タイプに分かれる

自律神経は交感神経と副交感神経の2タイプに分けられ、それぞれがバランス保ちながら健康が保たれています。

ひがし

交感神経と副交感神経の働きについて解説しますね。

交感神経

交感神経は、人間が活動すると働きます。

たとえばランニングをすると、血管が収縮して血圧が上がり全身に血液を運べるようになります。

さらに呼吸も激しくなったり気道が広がったりするため、酸素を全身に供給できるようにもなるのです。

一方で交感神経が働きが強まると、内蔵の働きは抑えられます。

食後すぐに運動をすると胃が食べ物を消化できないため、腹痛になることがあります。

副交感神経

副交感神経は就寝中やリラックスする際に働く神経です。

また内臓が活動するには、副交感神経が優位になる必要があります。

そのためストレスを受けて副交感神経が働かなくなると、食欲がなくなったり、便秘になったりします。

スマホを就寝直前まで見ると、交感神経が活発になり副交感神経の働きが抑えられるため、寝つきが悪くなるのです。

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経などの自律神経の働きがうまくいかない状態です。

自律神経は人間の身体のさまざまな機能を調整しているため、自律神経失調症になるとさまざまな心身の不調が現れます。

さらに感情やストレスの影響も受けるため、嫌なことが起こったり、環境が変わったりすると症状が悪化する特徴もあります。

症状が定まらないことから、不定愁訴(ふていしゅうそ)とも呼ばれます。

自律神経失調症は自力で治しにくい

自律神経は無意識のなかで起こる身体の生理現象であるため、自律神経失調症になると自力では治しにくいのも特徴です。

たとえば自律神経失調になり食欲がなくなる状態は、副交感神経の働きが悪くなることで、胃の活動が抑えられていると考えられます。

手足を動かすように自律神経を意識的に動かせれば、胃を活動させられますが、無意識で働く自律神経に対してはそうはいきません。

そこで鍼灸を受けて自律神経に働きかけると、自律神経失調症を改善へと導ける可能性があります。

鍼灸で自律神経が整うメカニズム

現代医学では、鍼灸で自律神経が整うメカニズムを「体性-自律神経反射」と呼ばれる反応で説明しています。

ここでは体性-自律神経反射について分かりやすく解説します。

さらに体性-自律神経反射の具体例と、ツボが内臓の調整に効果的な理由についても説明します。

体性-自律神経反射とは

体性-自律神経反射の模式図

体性-自律神経反射とは、皮膚や筋肉への刺激でおこる自律神経を介した体の反応です。

皮膚や筋肉に刺激を与えると、その情報が脳や脊髄に一旦伝えられ、そこから内臓機能に変化を起こします。

内臓ごとに体性-胃反射や体性-膀胱反射、体性-心臓反射と呼ばれることもあります。

皮膚や筋肉に鍼を刺したり、お灸を据えたりすると、体性-自律神経反射により内臓の働きを調整できることが、数々の研究でもわかっているのです。

体性-自律神経反射の具体例

体性-自律神経反射は、背中や腹部などの体幹部分を鍼灸で刺激した場合と、手足を刺激した場合とで反応が異なるといわれています。

ここでは、胃の反応を例に体性-自律神経反射の具体的な反応について解説します。

体幹を刺激した時の胃の反応

体幹を刺激した場合、交感神経が亢進するような反応が起こるため、胃の動きが抑制されると言われています。

このときの反応は体への鍼やお灸の刺激が一旦脊髄に伝わり、そこから胃の活動が抑えられるように自律神経が働きます。

とくに腹部に刺激をあたえると、胃の活動を抑えられるようです。

ひがし

胃酸の分泌が過剰になると、胃痛や胃潰瘍の原因になります。
鍼灸を受けて胃酸の分泌を抑えると、胃の調子を整えられますね。

手足を刺激した時の胃の反応

手足に刺激を与えると副交感神経が亢進するような反応が起こり、胃が活動するようになります。

このときの反応は体への鍼やお灸の刺激が脳に伝わり、そこから胃が活動的になるように自律神経が作用します。

たとえば足三里は、胃の調子を整える際によく使われるツボです。

鍼灸で使われるツボが内臓の調整に効果的な理由

鍼灸のツボが効果的な理由についても、現代医学においては体性-自律神経反射の理論で説明できます。

一方で伝統的な東洋医学では、ツボの効果について「気」という見えないエネルギーの流れで説明されます。

鍼灸は4,000年前くらいに中国で始まったといわれますが、その当時は自律神経は見つかっていませんでした。

しかし皮膚や筋肉を刺激すると胃の調子がよくなって、食欲不振が解消されることだけは経験的にわかっていました。

その経験則を体系化したものが、気の通り道である経絡や経穴(ツボ)などなのかもしれません。

つまり自律神経について知らなかった古代の名医が、ツボを刺激しておこった生理現象を説明するために、「気」の概念を編み出しとする考え方もあります。

ひがし

これは1つの仮説ですが、僕はこの考え方を支持しています。
しかし別の考え方もあり、実際に「気」が存在するという見方もあります。

自律神経を整える鍼灸治療のやり方の具体例

では、実際に自律神経を整える場合、どのような施術を行うのでしょうか。

ひがし

ここでは、僕が実際に行っている施術例をもとに解説します。
鍼灸院によって、やり方はさまざまですので、その点はご注意ください。

手足のツボを鍼やお灸で刺激

鍼でツボを刺激している様子
鍼でツボを刺激している様子

手足のツボを鍼で刺激する場合は、細い針を浅く刺します。

強い刺激を与えてしまうと、交感神経が優位になってしまうため、なるべくリラックスできるような刺激量に抑えるように配慮しています。

ほぼ痛みのない施術なので、安心して受けていただけます。

腹部のお灸で内臓の血流をアップ

腹部にお灸をして内臓の調子を整える
腹部にお灸をしている様子

腹部にお灸をすると、内蔵の血流量が増加するような自律神経による反応が期待できます。

腹部の刺激も適度で気持ちの良い温感刺激を心がけています。

ひがし

自律神経の調整で大切なのは、リラックスしていただくことと考えています。

自律神経を自分で整える方法

自律神経を自分で整えるのは難しいのですが、まったくできないわけではありません。

呼吸を整えたり、感情をコントロールしたりすることで自律神経を自分で整えることができます。

ひがし

自分で自律神経の乱れをなんとかしたい場合は、参考にしてくださいね。

呼吸を整える

呼吸は無意識に自律神経によって調整される一方で、意識して整えることも可能です。

そのため、日ごろからストレスを抱えて呼吸が速くなっている場合は、意識的に深くゆっくりと呼吸をすることで、自律神経を整えられます。

ひがし

仕事などの緊張を強いられる場面で、呼吸を意識的にゆっくりするように心がけてみてください。

感情をコントロールする

自律神経は感情に反応します。

不安を感じると交感神経が高ぶって心臓がドキドキしたり、呼吸が速くなったりします。

そのため不安を感じなように感情をコントロールすると、自律神経を調整できます。

たとえば不安を感じるような情報との接触を避けたり、瞑想で頭に次々と湧き出るネガティブなイメージを排除したりして意識的に感情をコントロールするとよいでしょう。

ひがし

マインドフルネス瞑想などは、心身の健康を保つ方法として現代医学でも期待されています。

自律神経失調症を改善したい場合は鍼灸を受けてみよう

鍼灸を受けると体性-自律神経反射による影響で、自律神経を整えることができます。

大昔に活躍した名医は、経験則により体性-自律神経反射による身体の反応を気やツボで体系的に理解しようと努めました。(諸説あり)

鍼灸で自律神経が整うことは、数々の論文でも報告されており、化学的なエビデンスも存在します。

自律神経失調症や自律神経の乱れによる不調で悩んでいる場合は、鍼灸治療を受けてみてはいかがでしょうか。

参考論文や書籍

鍼 による心拍数減少反応 と体性 自律神経反射―研究の背景 とその後の発展― 小 林 聰など

やさしい自律神経生理学 鈴木郁子 著

体性-自律神経反射の生理学 A.Sato・R.F.Schmidt 著

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この記事を書いた人

熊本県熊本市出身・在住の柔道整復師、鍼灸師。
ひがし鍼灸整体院の代表を務める。
臨床歴約10年で鍼灸と整体施術により、健康に悩む人の回復をサポート。
医師のコラム記事を代筆したり、健康関連のWebメディアに寄稿したりする活動も行っている。
プライベートでは3人娘の父
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